2014年5月25日日曜日

Lead the Polite Way

入学式だった。教室に入ると机の上に教科書が山積みにされていた。落丁・乱丁などをチェックするのは誰もが経験する一年に一度の通過儀礼だ。やれやれ、と思い一冊一冊確認をする。
「アダム徳永 50代からのスローセックス」「女医が教える本当に気持ちのいいSEX」「40代からのもっと気持ちいいSEX」「エマニエル夫人」「アナンガ・ランガ」「カーマ・スートラ」…(わからない人は検索してみよう)
ぼくは退学を決意した。役に立たない教科書で役に立たない授業を受けるなんて。
そんなことを思った刹那、陰部を露出させた、担任教師が教卓の上に立った。
「俺はここだよ。」ハゲ散らかしたSMAPの中居くんのような風貌の男だった。(ここ笑いどころです)
彼は続けた。「このスーツは、ジョルジオ・アルマーニに特注で作らせたんだ。」
確かに、陰部は無理やりスーツを切り裂いたのではなく、自然と、まるで数千年前からそこにあるようにスーツの一部として鎮座していた。
「イタリア人ってスケベだからさ。丁度僕の陰嚢もイタリア人が大好きなトマトみたいだろう?中にはニンニクがふたかけ入ってるんだ。そして僕の鷹の爪。言ってしまえば、アラビアータ風ってとこだな。」
ムカラミ・ハルキの小説に出てきそうな口調で話していたことが印象的だ。
「ドン引きのブラザー、それでいい。それでいいんだ。それで…ん?」
ハゲ散らかしたSMAP中居似の男は何かに感づいた。
「君、それ特注だね?そうなんだろう?」
とうとう生徒に絡み始めた、やれやれめんどくさいな、と思っていた。他人ごとだと思っていた。今までの人生で、こういうシチュエーションの場合、100%が他人に向けられたものだったからだ。
しかし、彼は僕に話しかけていた。
「それはアレだろ?ラバー製で…顔まですっぽりと覆っているが…肝心の…陰部が丸出しじゃないか」
何を言っているんだと思われるかもしれないが、彼の言うことはもっともだった。なぜなら僕はエナメルでできた全身を覆うスーツを着ていたから。もちろん陰部が丸出しなのは言うまでもない。そしてこのスーツはヴァレンティノに作らせたものだ。奇しくも、僕も彼もイタリアが好きみたいだ。こんなところで共通点を見つけるなんて。彼とは一緒に代官山にナッツでもつまみに行きたいな、などと日和っていた。
続く

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